2009年12月19日土曜日

正義が失われたCOP15

開幕以来2週間、予想された以上に混迷が続いたCOP15の最終日、いや正確に言うと翌朝3時半に始まった会議は、これまでで最大の大混乱となりました。途上国が議長から提示された「コペンハーゲン合意」草案に対し総反発したのです。まずツバルとベネズエラやキューバなどのラテンアメリカの国々が、透明性、非民主的な合意形成プロセスと草案の非常に弱い内容に対し力強く抗議しました。続いてニカラグアがCOP15の延期を提案し、その後数十分に中断、再開した後もその他の多くの国々からもこの公正、公平に欠けた合意案とプロセスへの怒りの声が続きました。しかし、一方で先進国は合意案を指示しています。

ここに来て合意がどうなるか全くわからなくなりました。
このような不正義を許した国連の行方も心配です。
そして、この不正義を支持する日本の国民であることも不安です。

2009年12月18日金曜日

途上国支援は飴?

COP15も残り一日となりました。昨日は、いったん作業部会は終了したものの、まだまだ技術的な詳細の議論が必要ということで、気候変動枠組条約と京都議定書のコンタクトグループが開催され、さらにその下に、各主要論点ごとの文書作成グループが復活しました。
細かい議論が続きながらも、世界の首脳陣が続々と到着しています。途上国と先進国の対立により、交渉は暗礁に乗り上げていると見られている中、ようやく先進国は最後の切り札として温めてきた「途上国支援」への資金拠出額を一斉に提示しだしました。アメリカは2020年までに先進国全体で年間1000億ドルを支援する提案を出してきました。日本は、実際には追加的な拠出になるかわかりませんが、鳩山イニシアティブとして2012年までに150億ドル支援すると表明しました。(90億ドルは既存のクールアース・パートナーシップ。)
先進国はこれらの途上国支援という飴玉をぶら下げ、途上国の求める「先進国による緊急な大幅削減」をうまくかわそうとしています。

途上国の貧困コミュニティでは、気候変動の影響は命に関わる緊急の問題です。先進国が温暖化を引き起こしたことに対する責任として途上国の気候変動対策は支援されるべきであり、先進国の温室効果ガスの排出削減を緩くすることと引き換えに交渉される問題であってはなりません。
すでに影響に脅かされているアフリカや小島嶼国は命がけで交渉に臨んでいます。一方、日本や欧米諸国は気候変動交渉を経済的な視点でゲームをしているように見えます。もちろんそれなりに真剣にこのゲームに取り組んでいますが。そして、その中間には飴や経済的恩恵に関心を示す国々も存在しています。各国の気候変動問題の意味合いの違いからも交渉は困難を極めています。

デンマークの失敗


火曜日の深夜から水曜日の明け方にかけて、これまでの議論をまとめた文書が配布され、議長と各地域グループの非公式の長い議論を経て、京都議定書の下と気候変動枠組条約の作業部会の閉会式が開催されました。アメリカは、この期に及んでも、文書の中で先進国の法的拘束力を伴う温室効果ガス削減義務や先進国による途上国の削減行動に対する支援が含まれていることに反対しましたが、文書は条約や議定書の会議への報告書として採択されました。
続いて開催された条約と議定書の会議では、とうとうデンマーク首相が独自に作成していた議長案「ラスムーセン文書」の存在が明らかものとなりました。
昨晩の徹夜の作業結果が合意文書草案になると信じていた中国をはじめとする途上国の国々により、この議長案をもちろん拒否されました。長い間、参加国全体でぶつかりあいながらも続けてきた議論が何も反映されずに、突然湧いて出てきた文書など、当然受け入れられるわけないでしょう。
おかしなことに、日本ではこの議長案が受け入れられなかったことを、途上国の反発によって合意が妨げられたように報道されています。国連のプロセスをないがしろにし、透明性に欠けた合意形成を試みて交渉を混乱させているのは議長国自身だというのに。
この日、前代未聞の突然の議長交代劇があり、ラスムーセン首相が議長に就任しました。

2009年12月16日水曜日

深夜まで続くCOP15


15日、首脳級会合での議論に向けた閣僚級での作業が最終段階を迎えました。ここ数日、朝配布されるプログラム通りに進むことはまずなく、今日も予定されていた会議はのびのびになっています。気候変動枠組条約の下の作業部会で、緩和、適応、資金等主要な要素ごとにさらにグループに分かれて進めてきた作業がほぼ終了しました。これから作業部会の閉会式が開かれ、条約会議へ報告する内容が確認されます。
しかし、8時から開始されるはずだった閉会式は、すでに日付をまわった午前1時半になっても始りません。先ほど各要素ごとの文書が配布されました。この文書を見ながら政府代表団は、地域グループごとに集まって相談し、この時間までも残っているNGOなどのオブザーバーたちは、文書が前回のドラフトからどう変わったか、重要な文章、言葉が抜け落ちていないかを確認しながら会議が始まるのを待っています。
何時になったら帰れるだろう・・・。
*写真:深夜まで会場に残る参加者たち

2009年12月15日火曜日

COP15から締め出される市民社会

COP15、二週目は閣僚級や首脳級の交渉に進みます。気候変動条約事務局は、NGOの入場にセカンダリーバッチというシステムを導入することを発表しました。火曜日からは、このセカンダリーバッチを持つ各団体の参加者数の約1/4しか会場に入れなくなります。
第一週目から警備の厳しさは尋常ではありませんでした。中国の政府代表団が中に入れてもらえないというハプニングまで起こりました。今週月曜日は、まだセカンダリーバッチシステムが導入される前だったにもかかわらず、突然NGOが入場に制限がかかり、極寒のコペンハーゲンで屋外に9時間待機させられるようなことも起こっています。
木曜日にはセカンダリーバッチの数が、NGOや研究者を含むオブザーパー全体で1000人、金曜日には90人に減らされることになっています。
今、世界の多くの市民の未来が左右される議論の場から市民が追い出されようとしています。アフリカ政府代表団などは、市民参加の必要性を訴えています。
環境NGOも条約事務局に働きかけていますが、明後日を過ぎると私たちNGOも情報へのアクセスが難しくなることは明らかです。
市民社会からは、このような対応を「国連の恥」、「国連の中の市民の立場は交渉の中のアフリカのようだ」などという声が聞かれます。

アフリカがCOPに待った!

第二週目の初めから、会議は大波乱です。
昨日のプログラムの中で、議長から気候変動枠組条約と京都議定書の下にそれぞれ分かれて進んでいる次期枠組の議論をすりあわせるための場を持つことが提案されたことに対し、アフリカグループが大反発して議論への参加を拒否しました。気候変動影響が死活問題であると感じているアフリカの国々は、今すぐに先進国に京都議定書の下で法的拘束力を持つ野心的な削減義務を持たせることと、気候変動枠組条約の下で途上国支援などのその他の問題を扱う枠組を作ることを主張しています。先進国が京都議定書を捨て、条約の下だけに緩い枠組を作ろうと働きかけていることに大きな懸念を抱いていることから、条約と議定書の議論を同じ場で進めることに危機感を感じたのです。また、アフリカの国々は、コペンハーゲン会合の透明性の低さと不平等な参加のプロセスに対して憤りを露わにしています。
このようなアフリカグループに対し、日本政府は自らが最初に次期枠組文書案を議論することを拒否したことを棚上げし、「交渉をストップさせて議論すらできない!」と強く批判しています。

2009年12月13日日曜日

コペンハーゲンに洪水!!


12月12日は、世界中で気候変動をとめるためのアクションを起こす「グローバルアクションデー」です。
デンマークのコペンハーゲンでも、数千人が平和的なデモ行進を行いました。
午前10時、FoEインターナショナルの呼びかけに世界中から集まった5000人以上の市民が、青いレインコートをまとってコペンハーゲンの町を行進しました。、5000人の青い行進は、まるでコペンハーゲンが洪水で溢れ返ったようですが、この洪水は世界各地を脅かしている気候変動の影響としての洪水ではなく、市民一人ひとりの思いの滴が集まって、気候変動を解決するための大きなうねりです。洪水となった市民は、COP15参加国に対して、オフセットなどの間違った解決策でごまかさずに、今すぐに真の対策を実行するよう「クライメート・ジャスティス(気候の公平性)」の必要性を訴えました。ヨーロッパ人らしい楽しい趣向が盛りだくさんのユニークなFloodアクションとなりました。

午後からは、さらに多くのNGOや市民、ユースが参加するコペンハーゲンの中心から国連会議場までデモ行進がありました。

これらの様子は、会場内のテレビでも中継が流され、多くの参加者の関心を呼んでいました。
FoE Japanも長い間気候交渉に対し、会場内と会場外からメッセージを送り続けてきています。どうか、この重要な場でこそ市民の声に耳を傾けてくれますように・・・。

COP15:議長草案登場


11日、気候変動枠組条約と京都議定書の下の両作業部会で、それぞれ議長草案が配布されました。これまで、各主要な論点のグループごとに分かれて、文書案を練っていたところに、突然議草案が提案され、予想していなかった国々は戸惑いを隠せませんでした。今後の議論現在も進む文書作成作業と今回出された草案とがどのような形で位置づけられるのかはまだわかりません。しかしながら、いくつかの国々からは、議論を前に進めるものになりうるとも評価されました。現在も、各国が草案の詳細を検証してます。
*写真:文書センター

2009年12月11日金曜日

次期枠組のあり方を巡って


コペンハーゲン会合3日目、気候変動枠組条約の会議が中断されました。条約の下に新しい議定書を作るための議論をする会議(コンタクトグループ)の場を持つかどうかで意見がまとまらなかったためです。条約の下に法的拘束力のある野心的な協定を求めるツバルの提案から口火がきられました。AOSIS(小島嶼国連合)は、ツバルの提案を支持しましたが、すでに存在する京都議定書の下で先進国に野心的な目標を持たせることが重要であると主張するサウジアラビア、インド、ベネズエラ、中国等は反対し、議論は紛糾しました。これまでに、日本、コスタリカ、オーストラリア、ツバル、米国が条約の下に新議定書を作ることを提案しています。
翌日の4日目、今度は京都議定書の会議において議定書の改定をめぐって議論されました。こちらの会議もまた中断され、議論は非公式会議に移されました。
事務方レベルの交渉は今日がデッドラインです。明日から始まる閣僚級の非公式会合までにどこま議論を進められるかが注目されます。


*写真:情報を求めて行き来する参加者たち

2009年12月10日木曜日

マザーアース(母なる地球)


条約の下の作業部会(LCA)では、主要な議論ごとに分かれた会議が続いており、ここにはNGOは入れないため、情報収集が困難になっています。各国政府や機関が開催している記者会見やサイドイベントは重要な情報収集源です。

昨日は、ボリビア政府のサイドイベントに参加しました。ボリビア政府は、途上国の中でも特に環境NGOに近い主張をする国の一つで、先進国に気候債務の返済を求めています。*気候債務に関してはFoEのポジションのページを参照ください:http://www.foejapan.org/climate/doc/COP15_message.html

サイドイベントの内容は、交渉に関する議論というよりも、ボリビア政府の主張の根本にある基本的な考え方の紹介でした。
以下、ボリビア大使は12月10日の国際人権デーを祝い、さらに今私たちにはマザーアース・デーが必要であると提案しながら以下のように述べました。

「人間に人権が保障されなければならないのと同じように、動物や植物を含む自然にも生きていく権利があるはずです。今、まさに母なる地球の権利を守るマザーアース・ムーブメントが必要なのです!」

2009年12月9日水曜日

コペンハーゲン合意草案リーク!

コペンハーゲン会合2日目、デンマーク首相の作成した合意草案「コペンハーゲン・アコード」が会場中に出回りました。
デンマーク政府が、密室の中で一部の国々と練りあげたこの草案は、残念ながらそのプロセス、内容ともに、世界中の期待とはほど遠いものでした。
公平で実効力のある気候変動合意は、すべての国の民主的な参加の下で作られるべきです。

開幕直後から、COP開催国としてのデンマーク政府の非民主的で透明性に欠けた行動は、国際市民社会から厳しく非難されています。

2009年12月8日火曜日

密室の交渉では解決できない!


昨日開催された気候変動枠組条約の下の特別作業部会の開会式で、FoEエルサルバドルのリカルド・ナバロが発言の機会を得ました。

歴史的に、地球の大気を汚染し続けてきた先進国に、このコペンハーゲン交渉に誠実な姿勢で取り組むことを求め、現在も表向きの議論の裏で続く影の交渉を以下のように厳しく批難しました。


「気候変動は、密室での合意では解決できません。影響住民の声を無視した一部の政府だけの秘密の会合が、不公平な世界を続けさせているのです。歴史的にしりたげられてきた人々の声を取り入れない限り、気候変動問題を解決することはできないでしょう。」

Flood is Coming!!


コペンハーゲンにFlood(洪水)がやってきます!

COP15にクライメート・ジャスティスを求めて、コペンハーゲンの街がFloodで浸ります。FoEヨーロッパのユースグループが中心となり、コペンハーゲンの市民と、世界中から集まっているCOP15参加者に気候変動の脅威を伝えるため、Floodアクションを続けています。青いカッパを着て街中を駆け回って洪水をイメージしたり(写真)、道端や電柱などにFloodのメッセージを貼ることでメディアや市民の関心を高めています。

12月12日には、数千人が参加するFloodアクションが企画されています。

COP15開幕



気候変動に対する国際的な取り組みを決めるCOP15が始まりました。世界中から集まった政府代表団には、今も気候変動の影響に脅かされている人々の生活や生態系、そして将来世代に対して責任の生じる重大な決断が強いられています。


北欧の小さな環境先進都市、コペンハーゲンに、世界中からメディアやNGOが集まり、参加登録数は、3万人を超えました。会場の許容人数の2倍以上になってしまったため、一部のNGO参加者は、登録手続きもできずに会場の外で待機している状態です。中には、世紀の瞬間に立ち会いたいという物珍しさで集まってきた人々も多く、CO2を出してまで参加するのはいかがなものかと思わないこともないですが、この複雑な気候問題にそれだけ世論の関心が向いているという事実として、各国政府に対してプレッシャーとなるでしょう。



初日の全体会合を通しては、今一度途上国支援のための資金メカニズムの重要性が確認されました。先進国がこの資金メカニズムにどう対応するかが、先進国温室効果ガス削減目標と途上国の削減対策の交渉をも左右する鍵となります。しかしながら、人々の命や生活が関わる気候変動影響への適応対策などへの支援は、気候変動を引き起こした先進国の義務であるべきで、政治的な交渉に左右されるものであってはならないはずです。人々の命が、カーボン・クレジットと同じレベルで議論されることに違和感をぬぐいきれません。



2009年12月7日月曜日

COP15開幕前のコペンハーゲン


京都議定書の第一約束期間終了後の国際的な気候変動対策を合意するための国連気候変動会合が、いよいよ12月7日~18日までデンマークのコペンハーゲンで開催されます。2年前のバリ会合で、このコペンハーゲン合意までの交渉の道筋が示されて以降たくさんの議論の場を重ねながら、先進国と途上国の関係は、歩み寄るどころか、溝が深まってしまいました。今会合でも激しい対立が予想されますが、開幕を明日に控え、コペンハーゲンの夜は嵐の前の静けさのように感じます。しかしながら、実際には今も、世界中の政府代表団やNGO、科学者、産業界、そしてメディアが続々と到着し、非公式会合や戦略会合等が多数開かれ、人も情報も忙しく行きかっています。


FoE インターナショナルでは、世界中から450人ものキャンぺナーやボランティアがコペンハーゲンに集まり、各国政府に向けて公平かつ実行力のある合意を求めます。

*写真:FoEインターナショナル会議でのFoE Japanスタッフによる若手キャンペナーへの気候交渉に関するレクチャー



from寒い寒い コペンハーゲン